特別研究成果

平成23年度特別研究推進事業について
 特別史跡三内丸山遺跡では、総合的・学際的研究を展開し、より一層遺跡の全体像の解明と縄文文化に関する研究を進めるため、関連する研究を実施しています。
個人研究
縄文時代の「盛土遺構」または「三内丸山遺跡」、「円筒土器文化」に関連する遺跡・遺構・遺物を対象とし、考古学的な研究以外に、民俗学や地理学、建築学などの視点による研究も対象とする、個人による研究。
共同研究 三内丸山遺跡について、複数の研究者による学際的な分析研究。


平成23年度の研究成果概要
(詳細な報告は年報15に掲載されています)
○個人研究
研究テーマ 三内丸山遺跡の盛土場の形成プロセスの解明
 −人為堆積土形成プロセスの研究方法の開発−
研究者 安 昭 R(株式会社パレオ・ラボ)
研究成果概要 盛土遺構の形成プロセスを解明するには, 元の地層の性状,盛る過程で付加される要素や盛られてからの植被などによる土壌化と付加堆積物の内容を明らかにすることが重要である。以上のことを課題として本研究では平成23年度の発掘調査の対象となった三内丸山遺跡西盛土において土層単位の観察・記載を行い,その上で盛土構成堆積物に含まれる植物遺体を検討した。その結果,盛土遺構の本体を構成する第V層についてその下部と上部とで堆積様式および植物遺体学的に異なる性質を示すことを明らかにした。第V層の下部では堆積物の廃棄単位が層理として認められ,堆積物に含まれる花粉群は保存状態が悪く極少産出し,植物珪酸体はチマキザサ節型の優占するものであった。第V層の上部では層準によって花粉群が良好な状態で産出し,クリ花粉の最優占する組成を示す。植物珪酸体ではチマキザサ節型の割合が減り,多種類の混在 する様相であった。一方,堆積物中の炭化材を用いた放射性炭素年代の検討によって,下部では比較的まとまった年代,上部ではばらつく年代傾向が明らかにされており,これらを総合的に考察すると第V層下部は堆積過程で絶えずに人手が加わったことによって均質化された堆積様相を示し,上部では比較的人為度が低く,盛り土間に時間間隙が存在する可能性が考えられる。

研究テーマ

縄文時代のマメ類利用の研究―三内丸山遺跡を中心にして

研究者

佐々木由香(パレオ・ラボ)

研究成果概要 2007年よりマメ類の臍の形態で属または亜属レベルの同定が可能になり、これに基づき、三内丸山遺跡を中心にマメ類炭化種子の再同定を行った。三内丸山遺跡出土の中期後葉の点には、ササゲ属アズキ亜属アズキ型が縄文時代中期以前では最多の出土例である80点が見いだされ、科以下の同定ができないマメ科も3点見いだされた。現生のマメ科種子と比較すると、野生種のヤブツルアズキに近い大きさであった。マメ科種子の利用は、年代測定結果や共伴する土器型式から、前期末葉頃から始まり、中期を通して利用された。本遺跡においては、アズキ型は人間が利用したクリなどの堅果類やニワトコなどのベリー類に伴って、炭化した状態で一定量産出するため、恒常的に利用されたと推定される。比較試料とした八戸市田代遺跡出土の炭化種子約40点弱には、やや大きなアズキ型が28点とマメ科が1点見いだされた。縄文時代の青森県ではアズキ型の利用が普遍的で、時期を経るごとに大型化した可能性がある。ヤブツルアズキの利用から栽培化へのプロセスを示しているのかもしれない。研究の結果、三内丸山遺跡における木本植物の利用に草本植物のアズキ型を中心としたマメ類の利用が加わることが明らかとなった。


○共同研究
研究テーマ

土器圧痕・生体化石資料の比較検討による縄文集落における
植物性食料の貯蔵形態と家屋害虫の実証的研究

研究代表者 小畑弘己(熊本大学文学部)
研究成果概要  本研究は三内丸山遺跡におけるクリなどの植物性デンプン質食物の貯蔵形態を探るため、これまで本遺跡から発見された食用・有用植物を「圧痕レプリカ法」という方法で補強するとともに、これまで検出された昆虫生体化石を検討し、害虫の生態から、本遺跡における乾燥植物食料の貯蔵形態を探ろうというものである。このため、土器の圧痕調査と昆虫の生体化石の洗い直しという2つの方法で調査を行った。
生体化石の調査と昆虫に関する既発表資料を参考にして、昆虫の中にコクゾウムシ属甲虫が数多く含まれることを確認できた。また、土器圧痕調査では42500点の円筒下層〜上層式土器を調査し、65点確認した。その中には、ヤマボウシ(?)、キハダ(?)、ウルシ属、ブドウ属、ニワトコ属などの木本類種子、ミゾソバ、タデ科、ヌスビトハギ属、ヒエ属、ササ属、ササゲ属アズキ型種子などの草本種子などがあった。昆虫としてはカミキリムシ科、ナガシンクイムシ科、シバンムシ科などの他に、コクゾウムシ属甲虫も圧痕としてかなりの数を検出することできた。 このコクゾウムシ属甲虫を含め、圧痕で検出した昆虫類は、家屋害虫であり、その一部は貯蔵食物を加害していた可能性が高い。
 今回の調査によって、土器製作時に紛れ込むほど、三内丸山遺跡の集落内にはクリ以外にも上記の野生・半野生のデンプン質種子類が多量に持ち込まれ、利用されていたことが裏付けられた。これらは、クリやドングリの種子と同じく、乾燥に強いため、長期保存食として集落内に貯蔵されていた可能性が高い。それは、今回、昆虫化石の調査と圧痕調査によって、ツヤケシヒメゾウムシと誤同定されてきたゾウムシ上科がコクゾウムシ属であることが判明し、この属の昆虫が植物種子を食し、その種子中に産卵し、成虫になるという生態を持つ点が大きな証拠となろう。その生態や生活環からみて、これらが乾燥貯蔵されていた植物種子を加害していた可能性は十分にありうる。ただし、その加害対象は上記の小型のイネ科種子やタデ科種子ではなく、本遺跡から多量に出土しているクリの実や今回圧痕調査でも検出されたアズキ型種子であったと考えられる。


その他の年度の研究成果概要について
平成10年度から行われている、特別研究推進事業の研究成果の概要について紹介します。

【平成10年度〜12年度の研究成果概要は、こちら】

【平成13年度〜15年度の研究成果概要は、こちら】

【平成16年度の研究成果概要は、こちら】

【平成17年度の研究成果概要は、こちら】

【平成18年度の研究成果概要は、こちら】

【平成19年度の研究成果概要は、こちら】

【平成20年度の研究成果概要は、こちら】

【平成21年度の研究成果概要は、こちら】

【平成22年度の研究成果概要は、こちら

なお、詳しい研究内容は「三内丸山遺跡 年報」に記載されています。


 

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