特別研究成果

平成28年度特別研究推進事業について
 特別史跡三内丸山遺跡では、総合的・学際的研究を展開し、より一層遺跡の全体像の解明と縄文文化に関する研究を進めるため、関連する研究を実施しています。
個人研究
・円筒土器に関する研究
・三内丸山遺跡に関する研究
・縄文文化に関する研究
・遺跡の保存・公開・活用に関する研究
共同研究


平成28年度の研究成果概要
(詳細な報告は年報21に掲載)
○個人研究
研究テーマ 縄文時代の木柱からみたクリ材の加工技術と
クリの生育環境 ―三内丸山遺跡を中心に―
研究者 荒川 隆史 (公益財団法人新潟県埋蔵文化財調査事業団)
研究成果概要  三内丸山遺跡における縄文時代のクリ材の加工技術とクリの生育環境を明らかにすることを目的として、出土クリ材の考古学的調査を行った。
 第26号大型掘立柱建物のピット2・3・5は丸太材で、底面に残る加工痕は求心的な方向とはなっておらず、伐採・分断後の平坦加工痕と考えられる。ピット4は丸太を半割し分割した偏ミカン割材である。底面の加工痕は木表側から求心方向と、心側から木表方向の2種類があり、それぞれ異なる磨製石斧が用いられる。前者は伐採痕ないし分断痕、後者は分割後に底面を平坦調整した加工痕と考えられる。本資料から大型掘立柱建物に分割材が利用されていたこと、接地面が柱の中心になるよう再調整が行われていたことが明らかになった。これらは縄文時代晩期の石川県チカモリ遺跡で認められる加工技術と共通し、中期に遡ることが分かった。
 このほか、第12号掘立柱建物をはじめとする木柱に大枝を含む枝痕跡を確認できた。柱根部分に枝があることから樹冠が長いクリであった可能性が高い。三内丸山遺跡のクリ林は成長速度が速いことを考え合わせると、通直の幹に成長する適度な立木密度で、果実の収穫量も確保できるものであったと推定される。

研究テーマ 三内丸山遺跡出土土器付着炭化物の炭素・窒素安定
同位体比分析
研究者 三内丸山遺跡保存活用推進室
研究成果概要

 土器に付着した炭化物の炭素・窒素安定同位体比を分析し、三内丸山遺跡における縄文時代の食材などの煮沸対象物を推定するためのデータを収集している。平成27年度は時期、平成28年度は法量による比較・検討を目的として分析を行っている。

時期による比較からは、これまで前期と中期の試料を分析した結果を踏まえ、以下の傾向が指摘できる。前期の試料は多くがC3植物(註)の範囲にプロットされ、海棲哺乳類の範囲に入るものもある。中期の試料は、C3植物の範囲と海産魚類とC3植物の中間あたりにプロットされる。中期の試料でC3植物の範囲にプロットされたものは、前期のものと比べるとN値が大きい。

   今年度の分析の目的である法量による比較では、分析可能点数が多い前期中葉の円筒下層b式土器の4点を対象とした。口径・器高が分かるもの115点の相対的な法量を比較し、土器を抽出した。大型は口径25cm・器高40cm以上のもので1点、小型は口径15cm・器高20cm以下のもので1点、そのほかに中型として、口径1525cm、器高2040cmの間に入るが、口径・器高とも小さいもの1点、口径が大きいもの1点を選択し、分析を行った。前年度の試料もあわせた結果、大型はC3植物、小型は海棲哺乳類の範囲、中型は、C3植物と草食動物の範囲、C3植物と海産魚類の間にプロットされた。

   小型土器で得られた煮沸対象物が海棲哺乳類であるという結果からは、その使用法が海棲哺乳類の油を用いた灯明容器という推測もできるが、1点のみの分析であるため蓋然性はない。このような仮説も含めて、今後、時期や法量による違いを検討するためにはさらに点数を増やして分析を行う必要がある。

 

 植物は光合成の方法によってC3植物、C4植物、CAM植物に分けられる。このうち、C4植物は熱帯・亜熱帯植物(トウモロコシ、サトウキビ、アワなど)、CAM植物は乾燥地帯の多肉植物(サボテン、ベンケイソウなど)が多く分類される。C3植物は上記2つを除く、コムギ、ダイズ、イネなどの多くの植物が分類される。

○共同研究
研究テーマ 三内丸山遺跡出土木材の酸素同位体分析
研究者

中塚武(1) ・佐野雅規(1)・木村勝彦(2)
小林謙一(3)・箱崎真隆 (4)
(1) 総合地球環境学研究所(2) 福島大学(3) 中央大学
(4) 国立歴史民俗博物館

研究成果概要

 有機物の酸素同位体比の測定技術が発展し、木材年輪に含まれるセルロースの酸素同位体比が、年輪幅だけでされていた年輪年代法の新しい指標として利用できるようになった。今回、縄文時代中期の第11496号ピット出土木材(木柱)および、縄文時代前期の北の谷出土木材37点の木材を分析した。現時点では東北地域の酸素同位体マスター・クロノロジーが完成しておらず、年代決定には至っていないが、2組の年輪試料がマッチングし、伐採年が同一である材も摘出でき、縄文前期の木材利用の一端を探ることができた。
 同時に、酸素同位体分析の参考とするべく、三内丸山遺跡および比較対象とする他遺跡の土器付着物・炭化材21点をAMS炭素14年代測定した。その結果、三内丸山遺跡の実年代は、紀元前4000cal BC年頃から2400cal BC年頃までで、東日本の各地域の実年代と対比させると、縄文前期前葉から後期初頭の年代であると確認できた。
 将来、過去3400年間にわたる日本最長のクロノロジーが構築できよう。東北日本各地の古材採集および酸素同位体比データ獲得を継続し、三内丸山遺跡出土木材の1年精度の年代決定を目指したい。




その他の年度の研究成果概要について
平成10年度から行われている、特別研究推進事業の研究成果の概要について紹介します。


【平成27年度の研究成果概要は、こちら】

【平成26年度の研究成果概要は、こちら】

【平成25年度の研究成果概要は、こちら】

【平成24年度の研究成果概要は、こちら】

【平成23年度の研究成果概要は、こちら】

【平成22年度の研究成果概要は、こちら】

【平成21年度の研究成果概要は、こちら】

【平成20年度の研究成果概要は、こちら】

【平成19年度の研究成果概要は、こちら】

【平成18年度の研究成果概要は、こちら】

【平成17年度の研究成果概要は、こちら】

【平成16年度の研究成果概要は、こちら】

【平成15年度~13年度の研究成果概要は、こちら】15年度分の詳細報告は年報7。

【平成12年度~10年度の研究成果概要は、こちら】





なお、詳しい研究内容は「三内丸山遺跡 年報」に記載されています。


 

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