平成29年度
研究テーマ
三内丸山遺跡の埋設土器に付加される人為的行為 -二次整形痕を中心に-
研究者
髙木 麻里帆 (埼玉大学大学院人文社会科学研究科)
研究成果概要
三内丸山遺跡では、円筒上層式を中心に約890基の埋設土器遺構が検出されている。この墓の棺である土器は、もとは煮炊きや貯蔵などに日用的に使用されていたものである。日用的な土器から棺へと転用される際には、土器の選定や二次整形など、さまざまな人為が施されていると推測する。しかし、これまでの研究ではこうした転用の過程が明らかにされていない。そこで、埋設土器を観察し、土器に付された行為の具体的な方法や特徴などを検討した。
対象とした資料は、遺跡内で埋設土器が集中する北盛土北側の、5つのグリッドから出土した埋設土器110基である。
観察の結果、34 基に把手・口縁部・胴部の打ち欠きや底部の穿孔など、少なくとも4種類の二次整形を行った痕跡が確認された。その中でも、口縁部を打ち欠く方法が全体の62%と最も大きな割合を占める。また、各種類の整形が単独で施された埋設土器に加え、複数の種類を組み合わせて仕上げられた土器も存在することから、さらに多くの種類やバリエーションが予想される。
本研究ではこうした二次整形を行う目的は、整形後の土器の形や容量の特徴から、土器の機能を目に見える形で変化させること、そして棺の基準に合った大きさ・形に整えることであると考える。
研究テーマ
円筒土器文化における集落の実態をさぐる -時期差・地域差・存続期間の比較研究-
研究者
三内丸山遺跡保存活用推進室
研究成果概要
特別研究推進事業の共同研究として「円筒土器文化における集落の実態をさぐる」というテーマで、平成29年度から3か年で研究を行うこととした。
土器型式ではない、竪穴建物跡、墓、貯蔵穴、石器、土偶、土製品、石製品などからも型式を見出し、異なる時間軸からの比較を試みる。土器型式に時間軸を頼ってきた考古学的時間を見直すだけではなく、土器とは時間幅の異なるものが存在することなどが整理され、物質文化の新たな比較検討の方向性を見出すことができる。
このような方法論のもと、遺構や遺物の属性を詳細に比較することによって、円筒土器文化における集落の実態をさぐることを目的としている。
時期差や地域差を表す属性を竪穴建物跡、土坑墓、貯蔵穴などで抽出し、地域ごとの変遷図を作成し、円筒土器文化圏における集落の特徴を比較検討する。あわせて、可能な限り遺物の変遷も示していく。
3か年計画で、三内丸山遺跡周辺、青森平野、青森県、4道県と円筒土器文化圏で地域を広げて資料を整理していく。今年度は三内丸山遺跡周辺と青森平野を中心に竪穴建物跡の変遷図を作成し、建物型式の設定を試みた。縄文時代前期は岩渡小谷(4)、稲山遺跡、中期は三内丸山、三内沢部(1)、三内丸山(6)遺跡を対象とした。
研究の成果として、竪穴建物跡の基本的な属性である、平面形、炉の種類、主柱穴の本数、特殊施設の有無で分類を行った結果、時期ごとや遺跡ごとの特徴が抽出できた。同時期の近接する集落でも、竪穴建物跡の特徴が属性ごとに異なることが整理された。
例えば、上層d・e式期には、楕円形で面積が小さい定型的な建物跡が主体的であるが、三内丸山(6)遺跡ではそのタイプが少なく、さまざまな形態がみられる。集落の立地している場所には斜面地が多いため、地形にあわせた建物跡になっている可能性がある。
三内沢部(1)遺跡では土器を使用した炉の割合が高い。
上層e式期には特殊施設が設置される竪穴建物跡が多い集落(三内丸山遺跡、三内沢部(1)遺跡)とそうでないもの(三内丸山(6)遺跡)がある。
これらは成果の一例で、集落ごとの特徴であるが、炉の種類、竪穴建物跡の面積、主柱穴の配置などの変化など、時期的な特徴も整理されている。