平成18年度
自由課題研究
研究テーマ
「残存デンプン分析から見た三内丸山遺跡の植物食-加工・利用技術の発展と展開-」
研究者
渋谷 綾子(総合研究大学院大学)
研究成果概要
三内丸山遺跡における植物利用の復元は、これまで種実分析や微化石分析によって行われてきた。本研究では、残存の可能性が低く、これらの分析ではわかっていない他のデンプン質植物の利用を明らかにするため、三内丸山遺跡から出土した石皿よりデンプン質残留物の検出を試みた。
その結果、調査の対象とした大半の石皿からデンプン粒を検出した。原形をとどめていないほど分解・損傷したデンプンが非常に多かったが、形態的には12~13種類のグループに分かれることが判明した。
さらに、三内丸山遺跡周辺の古植生の復元結果と民俗例における植物利用から、残存デンプンの候補となる植物を抽出し、今回検出したデンプンの形態がヤマノイモ、サトイモ、ハシバミのデンプンの形態とは一致しないことを明らかにした。検出したデンプンがどの植物由来のデンプンであるのか同定することはできなかったが、候補となる植物の一覧表を作成することができた。
総合研究
研究テーマ
「三内丸山遺跡北の谷出土植物遺体による縄文環境と植物利用の解析」
研究代表者
石川 隆二(弘前大学農学生命科学部)
研究成果概要
三内丸山遺跡では主に縄文時代前期の植物遺体が大量に保管されている。これらは水洗篩別されているために、効率的に地層毎の植物種子を選別することができ、縄文時代から現在に至る植物利用の時代変遷をみることができる。有用植物に与えられたインパクトをもとに人為選抜の効果を明らかにすることを試みた。
今回の研究では、ブドウ属種子の出現する地層年代を明らかにし、縄文前・中期に存在したブドウ属種子においては時代とともに種子サイズが増大した可能性を示した。特に、三内丸山遺跡が栄えていた時代に利用されていたブドウ属の一部であるヤマブドウにいたっては、他の地域に比較してサイズが大きくなっていることが示された。このように人為淘汰を生じさせる利用は、積極的に管理栽培をしていた可能性を強く支持する。ニワトコについても長期的利用による人為選抜が働いた結果、青森県内のニワトコ系統に種子の大型化する傾向がみられることを明らかにした。
年報
年報 11