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三内丸山遺跡についてabout

平成16年度

自由課題研究

研究テーマ

三内丸山遺跡出土石斧の産地と流通について

研究者

合地信生 (斜里町立知床博物館)

研究成果概要

 三内丸山遺跡出土の石斧は緑色片岩、花崗閃緑岩、青色片岩で作られており、構成鉱物より青色片岩は神居古潭構造帯の神居古潭峡谷、緑色片岩は額平川流域よりもたらされた事が明らかになった。また、緑色片岩は縄文時代前期~中期にかけて広く使われたが、花崗閃緑岩と青色片岩は中期に利用が急に多くなっている。緑色片岩の産地には縄文時代前期にすでに石斧製作遺跡があり、花崗閃緑岩は前期末、青色片岩は中期にそれぞれ石斧製作遺跡が岩石産地に作られている。このことから石斧製作遺跡と石斧が増加する時代との間には密接な関係があると思われる。

 

 

研究テーマ

出土資料の組成からみた三内丸山遺跡縄文時代中期における塗装技術の流入と展開

研究者

赤沼英男 (岩手県立博物館)

研究成果概要

 今回の調査では、縄文時代中期の遺構から出土した塗彩土器を取り上げ、型式学的分類結果と塗装技術に関する自然科学的調査結果の比較を行った。その結果、縄文時代前期には赤色系色材料に赤色チャートを用いる塗彩が主流であり、縄文時代中期になってパイプ状ベンガラで塗彩された資料が急増する様子がみてとれる。縄文時代中期以降大木式土器文化が流入し、在地の円筒土器文化と融合しながら新しい土器が生まれたと考えられているが、土器の塗彩に限定すれば、縄文時代中期に新たな塗彩材料および塗彩技法が大きく変化したことは間違いない。今後、遺跡内出土の土器型式、とりわけその製作技法と塗彩技法、および土器の用途を検討し、その結果に隣接する文化圏の様相を重ね合わせることによって、円筒土器文化圏における土器使用の変遷が一層みえてくるにちがいない。

 

 

研究テーマ

縄文時代東北地方北部のウルシ利用の調査

研究者

吉川純子 (古代の森研究舎)

研究成果概要

 最近、日本の縄文時代に集落周辺でウルシが生育していたと思われる事例が多く報告されている。青森県内の縄文時代前期~中期の廃棄層から出土したウルシ属内果皮を調査した結果、その多くがウルシであることがわかった。ウルシの中には炭化した内果皮も出土するため、これらの果実が利用後に廃棄されたと思われる。ウルシの果実からは良質な蝋が抽出できるので、縄文時代に果実から蝋を採取し利用していた可能性も考えられる。

 

 

特定課題研究

研究テーマ

木柱のC-14測定による年代の推定

研究者

河村日佐男 (財)日本海洋科学振興財団むつ海洋研究所

研究成果概要

 第27次調査区で頭を出した木柱の一部試料から採取した年輪について、加速器質量分析(AMS)により放射性炭素(14C)年代を測定し、ウイグルマッチングによる暦年較正を行って木柱の伐採年代を推定した。また、第19次調査で取り上げて水浸漬保存中の年代未測定の木柱から一部試料を採取し、同様に伐採暦年代を推定した。双方の年代はほぼ同じで、第19次調査の際に取り上げられた別のクリ柱材の伐採年代文献値に比べると若干遅い年代と推定された。暦年代を正確に推定するためには、研究対象となる年輪の母集団の数が大きいことが必要であるが、以上のデータは居住時期、木柱の相互関係、建て替え周期などの検討に資することが期待される。

 

 

総合研究

研究テーマ

世界狩猟採集民族研究からみた三内丸山遺跡 -文化景観の長期的変化とそのメカニズム-

研究者

羽生淳子 (University of California at Berkeley)

研究成果概要

 本研究の目的は、世界の狩猟採集民研究の視点から、三内丸山における生業・集落・社会の特徴、および遺跡機能の長期変化の解明に役立つ資料を蓄積することである。この目的のために、1.石器組成からみた三内丸山と青森県内の他の遺跡との比較、2.三内丸山における住居址数、住居規模、土偶数、埋設土器数の時間的変化の分析、3.石器砕片数の密度から見た捨て場の機能の分析、4.黒曜石の蛍光X線分析、5.植物種子組成の特徴とその時間的変化の分析、6.植物の柔組織の同定に関する基礎研究と、種子以外の出土炭化物の分析を含めた食生活研究、という6つのプロジェクトを行った。結果として、三内丸山遺跡における遺構、遺物の時間的変化を詳細に分析して行くことにより、文化変化のメカニズムを解明する道が開けることを明らかにした。さらに、マルティ・ボカリティの概念を用いて、研究成果の一般市民への還元方法に関する文化人類学的研究を行い、三内丸山遺跡における考古学者と市民との協力の試みが、欧米考古学における理論的議論と共通の基盤を有することを指摘した。

 

 

年報

年報 9