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三内丸山遺跡についてabout

平成13年度

総合研究

研究テーマ

三内丸山遺跡の生態系史の解明

研究者

辻誠一郎、紀藤典夫、吉川昌伸、辻圭子、後藤香奈子、村田泰輔

研究成果概要

 十和田火山は、後期旧石器時代以降の東北地方北部において、破局的な火山災害をもたらす重要な要素であることが分かってきている。そこで、十和田-八戸テフラ以降の火山活動史を正確・高精度に編年し噴火様式と生態系に及ぼした影響を評価することとした。その結果、十和田-中せりテフラは、これまで3度の噴火によりもたらされたものという説があったが、これをより明確にするこことなった。特に最初の噴火(中せり軽石部層)は最も破局的な活動をしており、火山東方のみならず周辺の広範囲に爆風と砂嵐をもたらしたと考えられる。これら火山活動が時間間隙をもち、生態系への影響の違いが大きな課題となっている。

 また、十和田-中せりテフラの前後では、八甲田山のブナ林は一時的にナラ類に、青森市南部の遺跡では、三内丸山遺跡と同様にブナ・ミズナラ等広葉落葉樹主体の森林からクリ・ウルシ属主体へと変化している。これは噴火が森林変化を誘導したのか、人の活動をも誘導したのか、人の活動は噴火と無関係だったのかが大きな問題となる。こうした因果関係をはっきりさせるため、より高精度な編年と遺物の層位・質的な変化との対応を明確にする必要がある。

 

 

研究テーマ

縄文時代におけるクリ資源利用と資源再生に関する総合研究

研究者

鈴木三男、高島成侑、清和研二、能城修一、山田昌久、佐藤洋一郎、山本俊哉、陶山佳久、新見倫子

研究成果概要

 縄文人はクリの実を食べ、その木材をを重要な建築材および燃料材として利用してきたが、三内丸山遺跡が継続する中で、クリ資源がどのように再生産され、供給され、利用されてきたのかを明らかにするため、総合的な研究を行った。

 その結果、雑木林からクリを抜き切りした場合、萠芽再生をするものの、ほとんどが消滅することがわかった。また、クリだけでなくすべての木を切ったところ、クリはよく萠芽し実生苗の発生も認められた。これらは、クリを抜き切りすると減少し、皆伐すると増える傾向にあることを示している
 また、クリの実の生産量には個体差が大きく、また同じ木でも年によって変動が大きい。さらに、年ごとの変動は他の個体と同調しないことがわかった。

 日本にはニホングリただ1種類があるが、大陸から渡来した可能性を調査するため、DNA解析をすることが有効である。このため、種のレベルで識別する方法とニホングリ内での遺伝的多様性をDNAにより解析する方法を開発した。

 

 

個人研究

研究テーマ

三内丸山遺跡とその周辺域の堆積土層の様相 -土壌学的研究から縄文文化土層の成因を解読する-

研究者

細野衛

研究成果概要

 一般に、最盛期には大規模な人為作用により、自然植生(ブナ、ナラ等の広葉樹林)が改変されて草原植生が成立、その植生環境下で周辺域と同様に黒色土層(黒ボク土層)の生成が予想される。しかし、三内丸山遺跡の最盛期にあたる縄文時代中期中頃の土層(第Ⅲ層)は、黒褐~暗褐色を呈しているのは何故であろうか。

 土層に含有する植物珪酸体(OP)を分析したところ、第Ⅲ層からは人為作用の増加に伴って減少するはずのササ属起源のOPの優勢が確認された。これは最盛期に生成した土層が黒色土でないことと合わせて考えると、第Ⅲ層より下の第Ⅴ層(ササ属起源のOPの優勢)の付加、つまり縄文人の土木工事に伴う土層攪乱・排土捨てによる褐色ローム土の付加であると考えられる。

 また、三内丸山縄文時代とその前後の土壌層相の変遷が明らかになった。

 

 

研究テーマ

縄文時代のクリ材の年輪解析による生育環境復元および高精度編年の試み

研究者

木村勝彦

研究成果概要

 遺跡出土木材と現生材の年輪解析から、クリ材の年輪年代決定の可能性について検討した。その結果、出土木材では年輪数が30年以下の場合、年輪パターンの有意な合致は得られなかったが、出土自然木のなかに年輪数が100年を越えるものもあり、編年作業をする際の良い物差しとして使える可能性があるため、同一層の自然木はできるだけ多く集めることが重要といえる。

 現生材では、出土木材と同様に30年前後の個体では、実際に同時代に生育していても年輪年代で同時代性を検出することはほとんどできなかった。50年以上であれば3割程度、90年あればかなり高い確率で合致することがわかった。また、離れた地域間でもある程度同調性がみられ、このことは異なる遺跡間でも使えることを示唆している。

 

 

研究テーマ

三内丸山遺跡粘土採掘坑粘土と遺跡出土土器の成分分析 -遺跡出土の土器・土偶はどこの土でつくられたか-

研究者

松本建速

研究成果概要

 遺跡から出土した膨大な量の土器などは、どこの、この地層の粘土かを把握するため、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で化学成分分析を行った。その結果、「粘土採掘坑粘土」は前期後葉~中期前葉の土器等には利用されておらず、それよりも下に堆積している灰白色の粘土が利用されている可能性があることがわかった。その場合、沢などで粘土が採掘されてたことも考えられる。また、小型土偶の中には遺跡の外から運ばれた可能性のあるものがあり、今後は形態や文様に注意して分析を継続したい。

 

 

年報

年報 6