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三内丸山遺跡についてabout

令和5年度

研究テーマ

円筒土器文化圏の集落形態と変遷に関する比較考古学的研究

研究者

永瀬史人(さいたま市教育委員会)

研究成果概要

 縄文時代の中でも人口が増加すると考えられている中期の集落は、関東地方では住居跡が環状にめぐる「環状集落」で構成されることが知られているが、円筒土器文化圏における同時期の集落はいわゆる「列状集落」であることを特徴とする。この集落の形態的な違いが何を意味しているのか? また、どのような点に共通性が認められるのか? 北東北・北海道と関東地方の縄文集落との比較を通じてその様相を捉えていくことを目的とする。

 ここでは、円筒土器文化のいわゆる「列状集落」の中で全体的な集落の構成や変遷が確認されているいくつかの遺跡を取り上げ、その時間的変遷と時期毎の住居跡の主軸方向などを分析項目として変化の画期を検討した。

 全体に共通する事項としては、中期後半以降になると住居群の分布が広場となる方向に寄る、あるいは主軸方向が広場の方向に向く、掘立柱建物群の出現が顕著になる例など、広場を意識し、利用するかのような傾向がみられ、墓にかかわる遺構が中央空間に出現するようになる。

 一方で、縄文集落の形態としてよく知られている「環状集落」の変遷をみると、住居群の分布が時間の変遷と共に広場の方向へ移行する傾向があり(内進化現象)、中期後葉以降、広場となる空間に屋外埋甕群や土壙墓群、環状列石などが現れる事例が確認された。

 列状集落と環状集落は北緯40°線を境に分布圏が明瞭に異なることから、その形態の違いは文化形態の差異によるものといえるが、二大群に分節された住居群と広場の空間を保持した形態、集落の変遷パターンには共通点が見いだされ、その背景に北東北や関東地方への大木系土器文化圏の波及が関与している可能性があることを指摘した。

研究テーマ

縄文人のDNAを解読する-堆積物からDNAを取り出せるか?-

研究者

山谷あかり(青森大学青森ねぶた健康研究所)

研究成果概要

 日本を代表する縄文遺跡である三内丸山遺跡に暮らした縄文人のDNAが解読できれば、その情報そのものが「資料」として重要であり、今後の人類進化研究の進展に寄与する。また、縄文人のゲノム情報と今の青森に暮らす現代人のゲノム情報を比較することで、例えば、青森県が「短命県」である理由を遺伝学的な視点から考察できるかもしれない。このような考えのもと、本研究に着手した。

 はじめに、三内丸山遺跡の堆積物(土壌)からのDNA抽出方法を検討した。由来の明らかなDNAを土壌に吸着させた後、抽出操作を行なった。その後、抽出液を分析し、設定した方法でDNAが抽出できることを確認した。次に、三内丸山遺跡に保管されていた埋設土器土壌をサンプリングし、土壌からDNAを抽出した。抽出したDNAに対して、配列を解析するためのライブラリ調製を行なった。シーケンスおよびデータ解析は金沢大学にて実施した(覚張隆史先生のご厚意による)。結果、埋設土器土壌サンプルから得られたDNAの中に縄文人由来だと思われるDNA配列は検出されなかった。より保管状態の良いサンプルであれば、縄文人DNAが残存していた可能性はある。今後、本研究をどのように継続するか、検討中である。